神奈川県横須賀市にある日産自動車追浜工場の動向は、湘南・三浦半島地域の経済や雇用情勢に大きな影響を与える可能性がある重要なニュースです。とくに、日産工場を抱える地域では、その撤退による地域経済への打撃が懸念されています。
日産自動車は2024年7月15日、経営再建の一環として、追浜工場での車両生産を2027年度末で終了すると発表しました。追浜工場の閉鎖については以前から報道や業界内で噂されており、今回の公式発表により現実味を帯びた形となりました。
さらに、平塚市にある日産湘南工場も2026年度末で生産終了予定であり、これにより神奈川県内の日産工場の大規模な再編・縮小が進むことになります。
追浜工場は横須賀市北部に位置し、地元経済に長年貢献してきた拠点です。高度経済成長期から続く日産の存在は、雇用や地域インフラにも密接に関わってきました。そのため、生産終了・撤退に伴う経済的・社会的な影響は小さくありません。
日産の誇り追浜工場の閉鎖

神奈川県横須賀市にある日産自動車追浜工場は、主に小型車「ノート」の生産を担い、年間およそ24万台分の生産能力を誇っています。しかしこの度、同生産は福岡県の九州工場に移管・統合されることが決まりました。
追浜工場では、車両生産に携わる約2,400人の従業員がいますが、2027年度の生産終了までは現行体制で勤務を継続予定です。その後の雇用の行方については、労働組合との協議を経て最終決定される見通しです。
一方で、工場の建屋などについては生産終了後に売却を視野に検討されており、周辺の土地利用にも変化が生じる可能性があります。ただし、隣接する研究所やテストコース、車両輸出用のふ頭については引き続き日産が活用する予定となっています。
日産自動車は1933年(昭和8年)に横浜市内で創業し、現在も本社を構えています。追浜工場は1961年に操業を開始して以来、日本の自動車産業の発展に大きく貢献してきました。
特に近年では、世界でも先駆けて電気自動車(EV)の量産を開始した工場としても知られ、日産のEV戦略を象徴する製造拠点でした。
この追浜工場の今後の転換について、イバン・エスピノーザ日産社長は7月15日の記者会見で次のように述べました。
「この改革は、工場で働く従業員にとって非常に大きな痛みを伴うものであり、苦渋の決断であった」
日産自動車の再建と新戦略が、地域社会や産業構造にどのような影響を及ぼすか。今後の動向が注目されます。
日産苦渋の決断

一方でエスピノーザ社長は、「現在の厳しい状況を乗り越え、再び成長軌道に戻るためには、改革はやり切らなければならない」と述べ、追浜工場の閉鎖は避けられないという姿勢を崩しませんでした。
追浜工場は、横浜市のグローバル本社と同じ神奈川県内に立地しており、生産技術を確立する「マザー工場」として長年の役割を果たしてきました。その重要拠点をめぐっては、台湾の電子機器受託製造大手である鴻海精密工業が、電気自動車(EV)分野での協業を望んでいたとも報じられています。しかしエスピノーザ社長は、「合弁会社の設立や委託生産の話はしていない」と明言し、提携よりも閉鎖という痛みを伴う決断を優先した姿勢を明らかにしました。
この判断の背景には、日産の企業としての強い自立意識があるようにも感じられます。日産は一時期、ホンダとの持株会社設立による経営統合を模索していましたが、2025年2月に協議の打ち切りを決定しました。ホンダ主導の経営となる可能性に対する警戒感があったとも推測されます。
また、経済産業省や主力銀行であるみずほ銀行からは協議再開を求める声もあったとされますが、日産はこれに応じることなく、あくまで自社主導による再建を選択しました。工場閉鎖による収益改善を図り、他社に依存せずに再生を果たすという姿勢が鮮明です。
日産城下町の追浜の今後

日産自動車が追浜工場の閉鎖を発表した7月15日、地元・横須賀市追浜地区では大きな落胆の声が広がりました。工場の存続を望んでいた地域にとって、この決定は大きな衝撃となり、地元経済への影響も避けられない情勢です。
追浜工場は、約2400人の従業員を抱える神奈川県内でも有数の大規模事業所です。従業員が地域で生活することにより、飲食店や小売店をはじめとする周辺ビジネスにも一定の経済効果をもたらしてきました。しかし、工場の閉鎖により、その需要が消失することで、地域経済に深刻な影響が及ぶことは避けられません。
また、追浜工場に部品などを納入している地元の中小企業、いわゆる下請け業者にとっても、日産からの受注がなくなることは死活問題です。取引先の突然の縮小や終了は、企業の経営に直接的な打撃を与える可能性があります。
さらに、かつては活気に満ちていた追浜の商店街も、現在では空き店舗が目立ち、来客数の減少が続いています。今回の工場撤退は、そのような地域の商業環境にさらなる追い打ちをかける結果となるでしょう。
最後に
日産追浜工場の存在は、単なる一企業の工場という枠を超え、地域の雇用や商業に深く関わってきました。その影響力の大きさをあらためて浮き彫りにする形となった今回の発表。今後の地域再生や企業誘致の在り方が、改めて問われることになりそうです。
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